前回の記事でもご紹介した「事業再構築補助金」の概要と事業計画書の作成方法について、今回は”再構築に取り組むに当たって記載が必要となる審査項目”を公開いたします。事業計画書作成の参考としていただければ幸いです。
1.審査の観点を理解する
前回の記事でもご紹介しておりますが、本補助金の事業計画書では審査上「加点項目」が存在します。あくまで基礎審査の観点となりますが、本補助金の公募要領・手引き(規則)に記載されている審査ポイントは、以下の通りとなっております。
■現在の事業の強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性を記載する。
■事業再構築の具体的内容(提供製品・サービス、導入する設備、工事等)を記載する。
■事業再構築の市場の状況、優位性、価格設定、課題やリスク・解決方法を明記する。
■実施体制、スケジュール、資金計画、収益計画(付加価値等を含む)を記載する。
※事業化に向けた計画の妥当性、再構築の必要性、地域経済への貢献、イノベーションの促進なども審査項目となります。
2.前回までのおさらい
さて、前回の記事では事業計画書における「表紙」〜「自社の既存ビジネスの実態把握(SWOT分析等まで)」をご紹介いたしました。審査員の視点として、まずは「申請事業者が、自社のビジネスを客観的に見ることができているか」を把握するため、独自で調査したアンケート分析やヒアリング調査等があると、尚ポイントは高くなるでしょう。
※自社の主力となる事業が、競合に対して「どのような点で優れているか」を記載する。
3.事業計画書〜続き〜
前回の記事に引き続き、事業計画書のテンプレートをご紹介いたします。
④既存ビジネスの市場と自社が抱えている課題を書き出してみる
多くの申請事業者様は、「既存ビジネスが低迷傾向にある。だから事業再構築をすることで、販路を拡大していく」というストーリーで計画書の作成に取り組まれることと存じます。このシートではマクロ・ミクロの視点で市場の動きを書き出し、その上で顕在化している課題を記載すると良いでしょう。またその上で、「この課題を解決するために、事業再構築に取り組む」という内容が記載できれば、説得性・必要性を訴求することができるのです。
⑤再構築する事業はレッドオーシャンか!?事業内容とビジネスモデルキャンバス
さて、新事業(事業・業種含む)転換・再編等を行う上で押さえておかなければならないポイントは、「新たに転換するその事業は、競合に打ち勝つだけのポテンシャルを持つものであるのか。業界マップ上、どこに位置付けられるのか」ということ。例えば価格・生産量の観点では、既に市場に参入している大規模組織の方が予算もあり、生産設備・規模において優位な立場にあります。真正面から安売りで展開し対抗する手法は、収益性の視点でも極めて困難であることがわかるでしょう。
⑥取り組みによって期待される効果と、再構築する事業が成功する根拠について
改めて再構築に取り組む事業の先進性・期待される事業・地域・経済への効果を見直してみましょう。特に事業者が取り組まれる今回の新事業が、業界内において「新たなモデルビジネスになる」という内容であれば、加点が高くなるものとご理解ください。
⑦再構築事業を含めたビジネスモデルの概要(図)と投資設備等について
審査員に「再構築事業」を含めた企業の全体像を明確に伝える必要があります。図や表を用い、収益の流れや取引先等を記載し、シナジー効果を産むことができる事業であることを訴求しましょう。また今回の事業で必要となる設備等を詳細に記載することで、使途不明金がないことを明示しておくことも重要です。
⑧計画遂行に必要となる経費・資金計画について
忘れてはならないことは公募要領に記載の通り、「思い切った取り組み」であることです。つまりキャッシュフロー上相当のリスクを背負いながらも、これまでの概念を打ち壊すような新たな試み・事業展開であることも求められます。資金繰り面で「安全性の高い数値」、「自己資金でできる範囲内の取り組み」であることが必ずしも「正解ではない」ことを、認識しておいてください。
⑨収益計画とリスクについて
最後に、今回の収益計画(見通し)と事業リスクを記載しておきましょう。なお本補助金では付加価値額の増加も審査ポイントとなるため、必ず諸経費等を除いた付加価値推移を加筆してください。
4.まとめ
さて、ここまで事業計画書の全体像をご紹介いたしました。特に正式な計画書フォーマットが公開されているわけではありませんが、様式がないことで「どのように作成をすすめたら良いのかがわからない」という方も多く、相談を受けたため、計画書のフォーマット公開に至りました。まだまだ実態はわからないことの方が多い補助金制度ですが、少しでもお役に立てれば幸いです。
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