中小企業診断士登録養成課程(兵庫県立大学大学院):受験・授業の様子/学びの楽しさと大変さをまとめてみた

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「社会人大学院」、それは日々の仕事や生活に追われる中で、自分の未来に新たな選択肢を増やす場だと思います。


キャリアアップ・視野を広げるための学び、そして同じ志を持つ仲間との出会い——すべてがここに詰まっているな...と思うこの頃。


ようやくその生活も終えようとしているため、私の振り返りも含めて記事に残すことができればと思い、ブログに投稿します。


1:中小企業診断士の受験を決意


私が中小企業診断士の受験を考え出したのは、25歳当時の商工会議所に勤め出したときのこと。


毎週定期的に「相談員」として来られる中小企業診断士の方(70歳の診断士)に同席しながら、「若い経営者たちが、こんなお爺さんに相談して何が得られるのか」と、当時は疑問を抱いていたことはここだけの話。



商工会議所・商工会では、多くの場合「専門相談員」という形で、「経営相談に対応できる中小企業診断士等の資格保有者」と契約を交わしています。


「市内の中小企業等の経営を支えること」を主たる業務としていますので、この一つの手段として士業の方との無料相談会が定期的に実施されているわけです。

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↑税理士とか中小企業診断士とか、何せ商工会議所には士業軍団が勢ぞろい



非常に興味深かったのが、そんな年配の中小企業診断士でも”論理的に物事をみて、的確な提案ができる”という点。



「相談者の事業の問題点を的確に整理し、課題を構造化し、必要な打ち手を示すまでの一連のプロセス」が、なんとも綺麗で快感すら覚える導き出し方だったのです。(もちろん、相談者の満足感たるや言うまでもありません)



これが商工会議所に入所して受けた初めての衝撃であり、中小企業診断士を目指すキッカケとなった出来事でした。



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そうと決まれば、さっそく書店に足を運んで「テキスト・問題集・過去問」を購入するところから。


まだ20代半ばで稼ぎも少なかったので、専門学校の活用は最終手段とし、書籍で乗り切る方向で1年目の学習をスタートしました。



しかしながら...早くも経済学・経済政策(1科目目)でつまづきます(笑)




学習経験のある方には伝わるかと思いますが、解けない問題や、理解できない解説に幾度と直面するのです。


これはダメだと思い、科目を変更して学習を再スタートするも、同じような壁にぶつかり...いよいよ学習3か月程度で「専門学校に切り替える」ことを決意しました。



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↑マトリクスでは、TACの位置づけは上記にプロットされるようです(本当か知りません)



当時は「中小企業診断士合格者=TAC生が多い」と聞いておりましたので、迷わずTAC大阪校にて入学申し込みを行いました。


結果的に1年目に3科目、2年目2科目、3年目に2科目合格を経て、1次試験(7科目)を突破することができたのです。








2:登録養成課程の選択


1次試験を「3年で合格する」ということについて、「早いですね!」という声もいただくのですが、専門学校の先生や現役の中小企業診断士の方に伺うと「圧倒的に遅い分類」に入るそうです。


私自身も、かなり苦労した認識があったと同時に、二次試験の「に」の字すら噛んでいない実態から、その年の「二次試験を含む完全合格」については半ばあきらめていました(笑)




そう、私のHP(体力)は、残り僅かだったのです...。



二次試験対策として「ふぞろいシリーズ」を購入したのですが、過去門を2周程度しか回すことができず、結果は4事例すべて評価Bの結果に。今年の二次試験は、あっけなく不合格となりました。


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↑一応記念として、受験票は保管している





私のキャリアはというと、新卒で広告会社に就職(2年)→支援機関(5年)に就職


7年ぐらいの会社員時代を過ごしたことになるのですが、受験者層の年齢分布からみると「まだまだ小童」という位置づけかもしれません。



結婚・転職・起業など、周囲の環境や付き合いが変わる中でキャリアについても色々考える時期に差し掛かっていることに加え、元々自頭が悪く勉強なんて苦手中の苦手。


ただ「何か形に残るものがほしい」とも考え、久しく「机と向き合った勉強」で唯一継続できたのが中小企業診断士の資格でした。



自分の今後のキャリアに、間違いなくこの資格が活かされる!!


なぜかそう確信し、より学びを深めたいとも考え、「登録養成課程」の道を視野に11月頃から動き出しました。



なにせ情報が少なく、唯一学費が安く、かつホームページやブログ記事があった「兵庫県立大学大学院」を第一希望にして、受験勉強を開始しました。


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兵庫県立大学大学院登録養成課程:https://www.u-hyogo.ac.jp/mba/










3:受験(試験と面接)


受験校自体はかなり少ないようで、関西圏だと兵庫県立大学に加え、大阪経済大学・関西学院大学が候補に挙がるようです。


ただし、歴史が浅いせいか、私の受験当時にはあまり情報が出回っておらず、受験対策やカリキュラムが把握できない状態でした。



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↑登録養成課程過去問入手方法:https://www.u-hyogo.ac.jp/mba/entrance/exam_outline.html#past



さて、二次試験の手ごたえ無しと判断した私は、さっそく同大学院に問い合わせをし、生協で過去問を入手します。


なんともアナログで、「返送用の封筒をつけて生協に郵送してください」という指示。


形式が古すぎやしないか!?事務局大丈夫か?


という不安を抱えながら、過去問が「主に日経新聞の記事抜粋から、1次試験で学習した内容を起点に論文を書く内容」であることが明らかになり、さっそく受験対策を開始。


論文自体は得意なのですが、何せ1次試験の合格から数カ月以上が経過していたため、不安が残る...。


ちなみに、試験対策は①日経新聞を購読し、毎日かかさず目を通すこと、②小論文対策本を一冊購入し、練習の際に活用することのみでした。


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↑私が受験した当時の倍率


非常に分かりづらいのですが、コースは地域イノベーションコースの中に「一般MBA=16名」と「中小企業診断士登録養成課程MBA=16名(こちらが受験対象)」の2つがあり、その合格者合計が32名となります。


一方の「一般MBA」の倍率は1.5倍程度なので、ほとんどの受験生が「中小企業診断士登録養成課程MBAコース志望」であることが、お分かりいただけるかと(笑)


受験日当日は...以下のようなスケジュールで進められます。


【時間】【内容】
<10:00-12:00>
小論文
・テーマ:日経新聞の記事から、支援機関のエコシステム的発展の可能性について述べる(エコシステムの意味についても回答する)

<13:00-15:00>
面接
・面接官3名に対し、受験者1名での面接
<16:00>完全撤収


特に午後の面接は五十音順で呼ばれるため、徐々に受験者が退室していくのを見守ることになります。


遅い方は夕方に及び、私の同期の方は「先生からお菓子が配布された」と仰っていました(笑)

 


4:いよいよ、授業スタート



入学してからの学生生活については、ブログやSNS等で公開されているケースは少ないと思います。


私も疑問だったのです。


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↑毎年恒例の全体懇親会(OBも来られます)


兵庫県立大学については「16名」を毎年輩出していて、すでに10年以上の実績があるのに...なぜ記録やSNSの投稿がこんなにも少ないのか。


年配者が多く、SNS活用に抵抗があるのか?という仮説も立てていました。



違うんです。



以下が2年間の授業カリキュラムですが、おそらく「SNSを更新する余裕がない」のだと思います。



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毎週土曜日は授業。


「実習」と記載されているところは平日に有休をとって、診断企業に訪問・調査を行います。



ただでさえ平日は忙しいのに、土曜日は丸1日潰れる。


課題は出されるも丁寧に捌く時間がない。



この事実から、「体力と根気強さ」は間違いなく不可欠なのです。



ただ授業が始まると、楽しいことも盛りだくさん。



授業はグループワークが中心なので、ホワイトボードに殴り書きでブレストしていったり...。


学食も、絶賛できる程ではないものの、世代を超えてランチしている感覚が新鮮で楽しい(笑)

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↑大企業に中小企業診断士として介入するなら?のワーク


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↑大学院の学食(公立の学校なので、毎回メニューが同じ(笑))


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↑大学院の公式ホームページにも、授業の様子が公開されています







5:仕事との両立の大変さ


カリキュラムがはじまった当初は、それなりのモチベーションで講義に臨むことができます。


毎週、ちょっと予習をして授業に臨んだり、与えられた課題を丁寧にこなすことだって、当時を振り返ると苦ではなかったかもしれません。



しかしながら、課題を重ねるにつれて限界が訪れます。


その気づきは、本業とのバランスが取れなくなるという弊害から。



それなりの職位や業務を担っている方が非常に多いこと・課題がグループワークや時に実地調査を行う必要(例えば、調査飲食店の回転率や客層・単価の調査)もあるため、かなりの時間管理術が求められるのです。


この仕事との両立について、課題をまとめると...。


1. 時間をいかにして確保するか

仕事をしながら大学院に通う最大の課題は、圧倒的な時間不足


平日は定時で退社できる日ばかりではなく、残業や突発的な仕事が発生することもあると思います。


一方、週末の講義に向けて平日夜にチームメンバーとのミーティング・プレゼン資料作成に充てる必要があり、プライベートな時間がほとんどなくなります


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↑オンラインミーティングの様子(ときには1週間のうち、19:00-21:00の打ち合わせ×2回とか)


2. 家族の理解・プライベートとのバランス

平日は仕事、週末は授業、+α課題や予習復習という生活が続くと、心身ともに疲労が蓄積します。


家族からの理解が得られないと、「家事の負担や育児の押し付け」に繋がり、家庭・プライベートな空間にも影響が出がちです。


入学前に、どれだけの迷惑をかけるか/その中でどのように分担を決めるか等、合意をとっておく必要があります



学祭の日に、家族を連れてこられている方もいらっしゃいました(笑)

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↑大学の学祭の様子


3. チームメンバーの理解・方向性の合致

グループワークが多い登録養成課程では、メンバーとスケジュールを調整する必要があり、かつある程度妥協点を決めて合意をとる力も求められます。



全員が社会人であるため、それぞれの業務状況や都合が異なり、作業がスムーズに進まないことは多々発生します。


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その中で、例えばチームでの合意形成がうまくとれないと「もう少し議論を深堀しましょう!」とか、「データをもう少し探して、プレゼン資料に落とし込みたい」等の要望を出す、前向きな方がたまにいらっしゃいます。(もちろんGood Action!です)


とても良いことなのですが、まぁ時間の制約もあり収集がつかなくなって...結局粒度のバラつきや質の低い成果物になりがちです。



いま振り返ると、「初めに落としどころ」を見極めてチーム作業に臨んでおけば、もっと効率的だったよなー...と思うことがあります。


 

6:診断実習という山場×5件


登録養成課程では、二次試験が免除される代わりに「診断実習」を計5社に対し行うことが必須要件となっています。


通常のカリキュラムをこなしていくと、「来週から、いよいよ診断実習ですね...」という会話がソワソワと。



楽勝案件だったらいいのですが、そうもいきません。


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↑実際の診断実習中の様子



8名1チームで、1つの会社に対して診断実習を行うわけですから

  • 診断提言を行う役割分担(財務・人事など)
  • 指導教官との相性
  • 答えの無い、より実務的な考察力

挙げだすと切りがない障壁が、たくさんあるのです。


結果的に約1か月の時間をかけて


報告書(約130ページ)

プレゼン資料(約100ページ)


これらを完成させ、ご協力いただいた企業様に対し、約2時間の提言(プレゼン)を行います。

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↑兵庫県立大学ホームページより



ある意味、この診断実習が最大の山場とも言えます。


振り返ると、平日は有休取得で仕事が溜まっていたし、指導教官との相性や専門的な指導に対する回答・修正に苦労することが多かった印象です。

 

7:卒業間近にして思うこと


卒業が近づくと、「もうすぐだなー」という気持ちと同時に、次のステップに向けた「本格的な準備の必要性」を意識するようになりました。


私は29歳になりましたが、同期の方には50歳・60歳と「次の人生」に向けた計画や企画を進められていたり。


世代を超えた学び舎だからこそ、年齢に関係なく刺激を受け、競争ではなく「自分も前進したい」と思うのです。


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先生に聞くと、どうやら卒業間近の時期は、毎年「今後のプラン」とか、「独立意識」的な会話が自然に出てくるらしい。



「私は何を目指したいのだろうか」



薄っすらと、思い描いている理想はあるけれど、もう少し煮詰めて形にしていきたいと思うのです。

 

ちなみに、同期生16名のうち、在学中に4名が転職、1名は開業/卒業後の独立希望者が5名。


社内で更にポジションを築き上げる方向もあるだろうし、いろんな可能性が広がっているのは間違いない。






 

8:これから登録養成課程をお考えの方へ



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。



少しは中小企業診断士登録養成課程の雰囲気が、お分かりいただけましたでしょうか?



ただでさえ少ない情報ですが、今後ますます中小企業診断士という資格がメジャーになり、そして優秀な方々に出会える日がきたらと願っています。


皆様のご活躍を応援しておりますし、またこの情報がお役に立てれば幸いです。


もし兵庫県立大学の養成課程をご検討されている場合は、どうかお気軽にSNS等を介してメッセージをいただければと思います。(微力ですが、雰囲気や学校生活のリアルなことは、お伝えできるかと思います)






9:私の情報発信ツールのご紹介


最後に、私が活用しているSNSアカウント・情報発信ツールを下記に記載しておりますので、お気軽にフォローいただければと思います!

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