商工会議所で働いて「ずっとモヤモヤしていたこと」を正直に書いてみる

スクリーンショット 2026-03-04 23.01.55.png

はじめに言っておきます。

これは、私が商工会議所に勤めていた当時、ずっと心の中に引っかかっていたことを、あえて言語化した記事です。

批判がしたいわけじゃない。

でも、「ずっと思ってた」ことを、そのまま書きます。


その1:「外部の専門家を呼ぶ」って、本当に必要?

商工会議所には、経営指導員(支援員)という職員がいます。

知らない方のために簡単に説明すると、経営指導員とは、中小企業や小規模事業者に対して経営の相談に乗ったり、計画書の作成を支援したりするプロフェッショナルです。(日商簿記2級の取得が必須要件です)





経済産業省の管轄のもと、全国の商工会議所・商工会に配置されており、なかには中小企業診断士・社会保険労務士・行政書士など、複数の国家資格を保有している経営指導員も少なくありません。


実際、私が勤めていた商工会議所にも、経験豊富でとても優秀な指導員の方々がいました。


では、なぜ外部の**中小企業診断士等に「外注」**するのか?


これが、正直ずっと腑に落ちなかったんです。




「専門家派遣事業」というものがあります。

これは、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が予算を持ち、商工会議所などの支援機関が窓口となって、外部の専門家(主に中小企業診断士や社会保険労務士など)を企業に派遣する仕組みです。


専門家の謝金は、補助が出ています。つまり、事業者からすると「ほぼタダ」で外部の専門家を使えるお得な制度です。

でも、ちょっと待って。

内部に優秀な指導員がいるなら、その人が対応すればいいんじゃないの?


もちろん、一定の合理性はあります。

たとえば、事業再生や事業承継のように、かなり高度な専門知識が求められる局面は確かにある。

「経営改善計画書の策定支援」や「メインバンクとの金融調整」など、現場の経験値が問われる場面では、特定分野に特化した外部専門家の力を借りることに意味があるかもしれない。

あるいは、製造業の現場改善(いわゆる5S・IE改善など) のように、工場の床を歩きながらラインを見て指摘できる人が必要なケースも、確かにある。

そういった「本当に高度で特殊な支援」については、活性化協議会(中小企業活性化協議会)や事業承継・引継ぎ支援センター、現場改善ではものづくりに精通した専門機関に繋いで対応する、というのが筋だと私は思っています。





でも、実態として**「専門家派遣を使うことが目的化されている」** ように見えることがある。

予算消化のために件数を増やす。件数を増やすために案件を増やす。すると相談者は増えるけど、「深い支援」より「件数のこなし方」に重点が置かれてしまう——そんな構図が透けて見えることがある、というのが正直な感想です。

ちなみにこの構図だと、現場の経営指導員は「いつまでたっても支援の経験・力が養われない」スパイラルに陥ります
※この結果、地方の商工会議所・商工会では、支援実務よりもセミナー運営やイベントに力が注がれているようです


その2:「相談者の取り合い」になってないか?

これが、私の中でいちばん大きなモヤモヤでした。

中小企業・小規模事業者を支援する公的支援機関は、実はものすごくたくさんあります。

ちょっとリストアップするだけでも、こんな感じです。


・商工会議所・商工会(経営指導員が常駐)

・市区町村の産業振興課・産業部門

・よろず支援拠点(全国各都道府県に1か所)

・産業活性化センター・産業支援センター・産業局(都道府県によって名称が異なる)

・中小機構の相談窓口

・事業承継・引継ぎ支援センター

・中小企業活性化協議会



これだけあって、それぞれが同じような情報を持ち、相談窓口を設け、セミナー等も開催しています。

さて、地域の中小企業経営者からすると、どこに相談すればいいのか、ちゃんと分かりますか?

私は、分からないと思う。

0.jpg
↑支援拠点多すぎ問題...。





経営者の立場で考えてみると、「補助金の相談をしたいな」と思ったとき、どこに連絡を入れるかは、正直「知っているかどうか」と「以前に訪問してきた担当者がいるかどうか」だけで決まります。

つまり**「最初に来た人を取り合う」** という、なんとも地味な競争が支援機関内で起きているわけです。


支援機関が増えた結果、何が起きているか。

機関ごとに「支援件数」というKPI(目標数値) が設定されています。当然、件数を稼ぐためには、相談者を「獲得」しなければなりません。

そうすると、支援機関の職員(や専門家)が企業を訪問・連絡して「うちに相談してください」という営業行為が起きる。あるいは、他の機関の支援者が「あの企業、うちがフォローしてます」という牽制をする。

こんなことが起きていました(少なくとも私の周辺では)。





これは本質的に、事業者等のために機能しているのか?

本来なら、「この企業のことを一番よく知っている支援者(機関)が主担当となって、必要な機関と連携する」というのが理想のはずです。でも現実は、それぞれの機関が自分の「件数」を守るために動いている、というケースが少なくない。

もちろん、連携が機能しているケースもある。でも、機能していないケースも、確実に存在する。


その3:補助金があふれた結果、「相談の入り口」が変わってしまった

これも、ずっと感じていたことです。

補助金・助成金の数が増えた結果、現場の相談のスタイルが変わりました。

00.png
↑ミラサポに掲載されている補助金一覧

以前は(少なくとも私の感覚では)「うちの商売、新規集客に悩んでいる。この地域での集客を効果的に進めるために、宣伝方法・ツールについて相談に乗ってほしい」という詳細から相談に入る機会が多かった。売上が伸びない、後継者がいない、仕入れが高騰している——そういった課題を抱えた経営者が、専門家と向き合って打ち手を考える、というプロセスがあった。


それが今は、相談の冒頭から

「補助金、何かありますか?」

この一言で始まることが、かなり増えました。


これが悪いことだとは言いません。

補助金の情報を得て、実際に設備を導入して生産性が上がった事業者もいる。IT導入補助金等を使ってシステム化が進み、業務効率が改善した事例もある。

補助金は、使い方次第で経営の「後押し」になる。これは事実です。

でも、ちょっと考えてほしいのが、**「補助金ありきで考える」のと、「経営課題を解決するために補助金を使う」**のでは、まったく意味が違うということ。





前者は、補助金を取ることが目的になっています。申請書を書き、採択されて、お金が入ってきた——でも、その機材は本当に経営に必要だったのか?補助金がなければ投資しなかった案件だとしたら、それは事業者にとって本当によかったのか?

補助金は「魔法の薬」ではない。

むしろ、経営の本質的な課題と向き合わずに補助金に頼ってしまうことで、「経営改善の機会」を逃してしまっているケースもあるのではないか、と思っています。


さらに言うと、支援機関側にも問題があります。

「補助金・助成金はないですか?」という相談が増えるにつれて、支援者側も補助金の案内・申請支援を軸にした支援スタイルに傾いていく。

これは、ある意味で仕方がないことかもしれない。「補助金を取れた」という結果は分かりやすいし、事業者にも喜ばれる。件数にもなる。

でも、それでいいのか?

中小企業の経営そのものを良くすることが、経営支援の本来の目的だとしたら、「補助金取ってきましたよ」だけでは、何か大事なものが抜け落ちている気がする。


最後に:これを書いた理由

私がこれを書いたのは、現場の支援実務や機関等を批判したいからではありません。

現場で働く経営指導員の方々は、本当に熱心で優秀な方がたくさんいます。支援機関が乱立している状況も、「地域の中小企業を支えたい」という思いから整備されてきた経緯がある。補助金が充実したことで、救われた事業者がたくさんいることも事実です。

でも、その「現場」にいたからこそ、感じた違和感がある。


「誰のための支援なのか」が、ふと見えにくくなる瞬間があった。

もし今、公的機関で経営支援に関わっている方がこれを読んでいるなら、ちょっとだけ思い出してほしいのです。

目の前の事業者のために、自分は今日、何をしたか。

それだけです。

ということで、本日もアドバイザー契約をしている商工会へ、行ってまいります笑